研究概要 |
対象は、組織学的にHCCと診断された47結節である。その内訳は高分化肝細胞癌(w)HCC19結節、中分化肝細胞癌(m)HCC22結節、低分化肝細胞癌(p)HCC6結節である。平均腫瘍径は25.2mm(10〜55mm)である。超音波装置は東芝Aplioを用い、造影剤はSonoVueを用いた。SonoVue1.5mlをbolus静注し、腫瘍および実質部の染影が得られた後、colorcodeしたFR1から、β値を反映する最高輝度の50%に達するarrivaltimeimaging(ATI)を作成した。A値を反映するAイメージは、lateporta}phase(90〜180秒)の画像から信号強度とIinearityの高いグレイスケール表示により作成した。これらのparametricimageと、組織学的分化度との比較を行った。ATIでは腫瘍部に早期より流入する血流シグナルを認めるものと、逆に非腫瘍部より遅いものもあった.しかしATIでは周囲の組織血流の情報は欠如していた.PTIではATI同様腫瘍部と非腫瘍部との環流速度の違いがcolorcodeされた。さらに周囲肝実質は腫瘍部と比べplateauに達するまでの時間が遅く,かつ輝度は腫瘍部と比べ高く、A値がより高いことが画像上で容易に視認された.また,血管数はhyperな腫瘍の方がhypoな腫瘍と比べ多く,さらに,血管内腔総断面積は周囲肝実質が腫瘍部と比べ有意に大きかった.肝細胞癌では17/22(77.3%)でβ値が正常肝実質より高く,5/22(22.7%)で正常肝実質と同等であった.2/22(9.1%)で結飾内部に、β値のより高いfociを認めた.A値は17/22(77.3%)で正常肝実質より低く,5/22(22.7%)で正常肝実質と同等であった.転移性肝癌では全例β値は正常肝実質より高く,A値は低かった.肝血管腫では1例を除きβ値は正常肝実質より低く,A値は全例高かった.超音波造影剤による検討で肝細胞機能評価および悪性疾患による血管新生の状態が確認出来る。さらに新生した腫瘍血管の血管抵抗の変化により血流パラメータが変化し映像化されることが示された。まとめ:肝細胞癌は、増大に伴い脱分化して行く多段階発癌の性質を持つことが知られている。今回の検討では、高分化から中分化へ脱分化する際の血管増生に伴い、環流速度が増加しβ値が増大すると考えられた。同時に、類洞の血管化により血管容積が減少しA値が低下すると考えられた。中分化から低分化への脱分化に伴う血管浸潤により、A値が低下し、環流の不均一性が顕著になることが示唆された。βimagingやAimagingなどの血流パラメトリックイメージは、HCCの組織学的脱分化に伴う血管新生や血管浸潤の生物学的悪性度を反映していると考えられ、HCCの組織学的分化度の診断や治療方針の決定に有用であることが示唆された。
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