研究概要 |
疼痛モデル動物に物理的刺激による治療を試み,筋機能および疼痛への影響を明らかにすることを目的に実験的研究を実施した。坐骨神経の絞拡による神経因性疼痛モデル(以下CCI)をSD系雄性ラットを用いて作成した(CCI群)。まだ、偽手術(CON)群も作成した。それらの一部に下腿三頭筋に対して1日あたり30分の持続的なストレッチをモデル作成直後から2週間、毎日施した(各CCI+St群,CON+St群)。ストレッチの影響は,疼痛行動と,鎮痛作用の指標として後根神経節細胞(DRG)におけるグリア由来神経栄養因子(GDNF)の発現程度,および筋機能指標として筋湿重量,筋横断面積,筋線維タイプ組成,筋小胞体へのCa2+取り込み速度について調べた。 皮膚および筋への機械刺激に対する逃避反応の結果から,ストレッチは疼痛発現時期を遅らせる可能性が示された。しかし,鎮痛指標としたDRGにおけるGDNFの発現量は組織学的な検討では増加し,生化学的検討では逆にCON群に比べ有意に低下した。一方生化学的な検討のみであったが,ストレッチを加えた下腿三頭筋におけるGDNF量は増加するという矛盾した結果となったため,今後の再検討が必要となった。筋萎縮の指標となる筋湿重量や筋横断面積測定値は,CCI群でCON群より低値を示し,ストレッチを加えても改善しなかった。しかし,CCIにより速筋線維である腓腹筋の筋線維組成が遅筋に近い変化を示していたが,CCI+St群ではその変化が弱かった。筋小胞体へのCa^<2+>取り込み速度についても検討を加えたが,測定操作上の問題で測定不能であった。 これらのことから,ストレッチが慢性痛を軽減し,二次的変性を抑制する効果を持つことがある程度示された。
|