研究概要 |
慢性呼吸不全患者は体重減少を呈するものが多く、生存予後にも重要な要因となる。脂肪組織由来の種々の生理活性物質であるアディポネクチンは脂肪代謝と体重に関するユニークな特徴を持っている。本研究では、慢性呼吸不全患者におけるアディポサイトカインの血中動態を解明する。 慢性呼吸不全患者12名(男性9名、女性3名、平均年齢51.8±9.9歳)を対象に肺機能(VC, %VC, FEV1,%FEV1,FEV1/VC)、身体組成(body mass index(BMI), %ideal body weight(%IBW), body fat mass(BFM), body fat percentage(BF%), skeletal muscle mass(SMM), protein mass(PM), fat freeass(FFM))、血液検査(adiponectin, TNF-α, leptin, fasting glucose(FBG), insulin(IRI), freefatty acid(FFA), retinol binding Protein(RBP), prealbumin(PA), hemoglobin Alc(Hb-Alc))を施行した。慢性呼吸不全患者のアディポネクチンは健常者より高値を示した。しかし、肺機能測定値である%FEV1と%VCはアディポネクチンと相関を示さなかった。身体組成であるBMIおよびFFMは非常に強い相関を認めたが、BFMでは相関を示さなかった。また、Insulin resistance(HOMA-R)はアディポネクチンと相関を示さなかった。以上に結果より、アディポネクチンは慢性呼吸不全患者の体重減少に関与する一因子であることが示唆された。体重減少に関連する病態でのアディポサイトカインの役割などはこれから解明される分野である。本研究はその嚆矢となるべきものであり、その病態生理学的意義とともに、呼吸リハビリテーションにおける栄養代謝を向上させる研究に新たな可能性をもたらすものとなる。
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