研究概要 |
本研究では,ヒト(指導者)がヒト(顧客)に対して対人的にスポーツサービスを提供するという事業を営むヒューマン・サービス組織として民間スポーツ・フィットネスクラブ経営組織を措定し,そうしたクラブ経営組織が展開する「関係性マーケティング」の構図について吟味してきた。そのため,関係性マーケティングの概念的枠組みを「サービス戦略」(山下ら,2003),「ITの有効活用」(南,2006),および「サービスマーケティング活動」(細野,1993;小川,1994;コトラー,2005)という複眼的視点から検討した結果,目には見えないスポーツサービスを視聴覚化し(マークやシンボル,象徴的な色や音楽など),クオリティの良さを象徴することで,顧客に安心感を与える「有形化戦略」,スポーツサービスの需要と供給のバランス化を図る「同期化戦略」,スポーツサービスのクオリティ・イメージやブランド・イメージの一貫性や統一性を訴求する「同一化戦略」,スポーツサービス生産・提供プロセスを顧客と協働的かつシステム的に効率よく進める「システム化戦略」,そしてスポーツサービスの均質性を保つ「同質化戦略」といった5つが明確にされた。 こうした概念的枠組みの有効性・妥当性を検証するために,平成17年度には3ヶ所のクラブ経営組織においてクラブ会員調査(留置法と直接手渡法を併用した質問紙調査で379,58.3%の有効標本回収数・回収率を得た)を実施し,平成18年度には全国1,000ヶ所(全国2,873ヶ所から無作為抽出)に対するクラブ経営組織調査(郵送法による質問紙調査で198,20.2%の有効回収標本数・回収率を得た)を実施した。こうした,クラブ会員調査とクラブ経営組織調査という2つの側面からの分析結果,ヒューマン・サービス組織としての民間スポーツ・フィットネスクラブのマネジメントにはこうした5つからなる関係性マーケティング戦略が必要不可欠であるということが明確にされた。
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