研究概要 |
17年度は肩甲骨、上腕骨の各ランドマーク近傍皮膚マークの位置変化から上肢帯と上腕部の骨格の正確な位置を求めることを試みた。まずさまざまな肢位をとらせ、両者の関係を肩関節角度および肘関節角度の関数として表し、重回帰分析によって上肢帯の動きを推定した。次にコッキング期や加速期など投球動作中のいくつかの代表的な局面の肢位を静的に被検者にとらせ、これによって動作中の皮膚上の分析マークと骨のランドマークとの相対的な位置関係の補正をした。 18年度は妥当性を検証するために,体表マーカーを用い解析した方法と磁気センサを用いた方法を比較検討した。挙上動作は前額面から前方に0°,30°,60°,90°,120°で,挙上30°,45°,60°,90°,120°の点で静止させて体表マーカーをつけDLT法で測定した。前者の推定式から算出した角度と磁気センサにより計測した角度を比較すると肩甲骨内旋と上方回旋では非常に高い相関関係が認められ、上腕骨水平内転30°以上での肩甲骨内旋,上腕骨水平内転30°以上での肩甲骨上方回旋で体表マーカーによる肩甲骨の動きの推定が可能であること,上腕骨水平内転0〜30°での肩甲骨内旋,上腕骨水平内転0〜30°肩甲骨上方回旋については系統誤差が推測されるので推定式上で補正できる可能性があることを得た。少年野球のフィールド調査では,愛知県の少年野球チーム40名の肩関節を調査した。前方laxityについては、成人で報告されているような投球側前方のlaxityはほとんどなく、むしろ非投球側に多くみとめた。また下方へのlaxityをいずれかの肩に認めた例はそうでない例に比べて有意差をもって投球側肩関節内旋可動域が減少していた。後方のlaxityでは同様のことが認められなかったことから,この年代の下方へのlaxityは投球肩障害の発生に関与する可能性が考えられる。
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