研究概要 |
1.定期的にスポーツを実施している脊髄損傷者の末梢循環機能を評価するために,健常者およびスポーツ種目による比較を行った.脊髄損傷者の末梢循環機能は健常者に比べ,上肢は優れていたが下肢は劣っていた,このことから,脊髄損傷者のスポーツ活動は上肢の末梢循環機能を高めるが,下肢については改善しないことが示唆された.脊髄損傷者をスポーツ種目で分類し,トレーニング効果の違いを検討したところ,車いすマラソン選手の上肢の末梢循環機能は,車椅子バスケットボール選手より有意に優れていたが,下肢の末梢循環機能は劣る傾向を得た.このように車いすマラソンと車椅子バスケットボールでは,末梢循環機能に異なる影響を現わすことが示唆された. 2.車椅子バスケットボールの運動強度をゲーム中の移動距離,最高速度および平均速度から評価した結果,総移動距離約5km,最高速度約6m/秒,平均速度約1.8m/秒であった. 3.車椅子マラソン選手4名に通常の車椅子マラソントレーニング(週5〜6日,1回約2時間)に加え,8週間の上肢筋力トレーニング(5種目,10RM・3セット,週3日)を実施させ,上肢の筋力と持久力のコンビネーショントレーニングが上下肢の筋機能と末梢循環機能に及ぼす影響を検討した.その結果,前腕囲,握力は増加する傾向がみられたが,下腿囲に変化はなかった.上肢の末梢循環機能は,筋力トレーニング実施4週間後に向上したが,8週間後にはトレーニング前の値に戻った,下肢の末梢循環機能には変化がなかった.トレーニング期間を通じて血圧の上昇が認められたが,正常値の範囲内であった,したがって,車椅子マラソン選手に対するコンビネーショントレーニングは,上肢と下肢の末梢循環機能に影響を与えなかったが,それは,通常の持久力トレーニングの強度が高いために筋力トレーニングの効果を抑制したものと推察された.
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