研究概要 |
本研究の目的は,認知的スキルを育成する保健授業を開発し,その有効性を検討することである。高校2年生284名(男子146名,女子138名)の授業群3クラス,対照群4クラスのうち調査すべてに回答した246名(全体の86.6%)を対象とした。授業においては認知的スキルの一つと考えられる自己管理スキルの育成を目指した。自己管理スキルは,問題解決的に取り組むスキル,否定的思考をコントロールするスキル,即座の満足を先延ばしするスキルの3つが,因子分析により抽出されている。授業は,これらの3つの因子を伸ばすねらいで構成されている。調査内容は,性の意思決定・行動選択に関する態度と一般性の高い認知的スキルについてであり,授業介入による変化を検討した。一般性の高い認知的スキルについては,高橋の開発した自己管理スキル尺度を用いて測定した。調査は,授業の始まる前,授業終了1週間後,授業終了3カ月後の3時点において選択肢式の質問紙を用いて行なった。授業群は授業後に性の意思決定・行動選択に関する態度が好ましい方向に変わり,3カ月後も定着していた。また,一般性の高い認知的スキルも授業後に向上し,3カ月後も定着していた。このことにより,本研究で開発された認知的スキルを育成する性教育指導法は,望ましい性行動の選択に貢献できる可能性のあることが示唆されたといえる。 また,上記以外の保健授業に関しても,複数の授業内容に関して授業開発を行い,模擬授業等を実施し,モデルづくりとその検証を行った。それらにより,認知的スキルの育成を目指す保健授業は,一般教師によっても開発・実施可能であり,また,健康教育として効果的であるという示唆が得られた。
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