研究概要 |
小児期に受けた逆境体験が、その後の病気や問題行動、学校不適応の発症因子になっているか調査した。家庭内の逆境体験として、(1)両親間の暴力、(2)親からの身体的暴力、(3)親からの精神的暴力、(4)家族の病気、(5)親から可愛がられた体験、(6)両親の離婚または別居、(7)家庭崩壊で、家庭外の逆境体験として、(1)先生や級友からの身体的暴力、贔屓や無視などの精神的暴力、(2)小、中学校でのいじめられた体験、(3)性的いたずらで評価した。対象は日本の学生1592名とソウルの学生980名。 日本の学生では心身症14.8%、アレルギー疾患38.3%、睡眠障害6.5%、うつ気分9.0%の既往があった。問題行動では自傷行為7.5%、自殺企図10.0%、家庭内暴力5.5%、摂食行動異常5.3%にみられ、学校不適応の割合は小学校6.7%、中学校9.5%、高校9.7%であった。 逆境体験数が多いほど病気発症、問題行動、学校不適応の割合は高かった。うつ傾向では、精神的暴力をしばしば受けた者は、なかった者に比べ相対危険度は16.8であった。また、自傷行為は8.7、学校不適応は9.6であった。自傷行為では性的いたずらが5.8、学校不適応では学校でいじめられた体験が7.3であった。 韓国との比較では、家庭内逆境体験では身体的暴力の頻度はソウルの学生が15.7%で日本の6.2%に比べ高かったが、精神的暴力、両親の離婚割合、家庭が崩壊している割合は日本が13.8%,7.0%,5,0%でソウルの10.2%,4.6%,2.7%に比べ高かった。家庭外逆境体験では、小学校、中学校でのいじめられた体験はソウルの3.4%,4.7%に比べ日本は11.7%,21.8%と高く、先生や級友からの贔屓や無視された割合も日本が3.7%でソウルの1.3%に比べ高かった。 以上より、逆境体験が若者の病気発症や問題行動、学校適応に影響していることがわかった。
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