研究概要 |
乳児は泣きやぐずりによって養育者に不快感や苦痛を訴え,養育者はそれによって乳児の状態を知り乳児の情動を調整するためにあやし行動をおこす。乳児はそのような相互交渉によって自分の情動を平静化させる。しかし,適切なあやし行動を行えないと,乳児の情動は治まらない。そして,それがまた,養育者の情動をネガティブに変え,これが引き金になって乳幼児の虐待を引き起こすことも考えられる。 そこで本研究では,あやし行動時における乳児とその対面者の相互の情動変化について,生理心理学的研究を行った。顔面皮膚温,唾液中コルチゾール,あやし行動,あやし言葉,対乳児音声の測定を行った。 乳児にあやし行動を行い,乳児の顔面皮膚温を測定した。その結果,乳児の情動変化に応じて,鼻部皮膚温が変化した。乳児をあやして笑いを喚起させると,鼻部皮膚温は低下した。 また,対面者と乳児の唾液を採取して,情動変化を検討したところ,あやし行動を快と感じた対面者ほど,乳児あやし行動時にコルチゾール値が有意に低下した。一方,乳児については,様々な被験者にあやされた乳児のコルチゾール値はあやされることで有意に上昇した。 対乳児音声については,multimodal mothereseとして知られる非接触的あやし行動や遊戯的音声を発言しながら乳児と関わっており,mothereseも出現していた。
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