研究概要 |
【研究内容】沖縄県の沖縄島を中心とした紅型,福島県の会津若松,田島,喜多方を中心とした会津型,三重県鈴鹿市の白子・寺家を中心とした伊勢型について,それぞれの色彩,文様,技法などの相違点を明らかにし,型染の美意識について比較検討し,技法,染色法,色彩,道具,型紙の面から紅型の特徴と美意識を考察した。 【研究結果】(1)染型紙:伊勢型,会津型は,白地彫りと染地彫りのいづれかであるのに対して,紅型は,白地彫りと染地彫りの両方がひとつの染型に存在している場合が多い。 (2)技法や道具:紅型には「糸掛け」が,伊勢型には「糸入れ」が残っている。「糸入れ」と「糸かけ」は異なる技法である。紅型はほとんど突彫りであるが,シーグアーなどを使う道具彫りもみられる。 (3)彫り台:紅型の型を彫るときの台は沖縄豆腐を乾燥加工した「ルクジュウ」を使って彫る。 (4)型屋と染屋(紺屋):伊勢型には,型彫り専門の彫り職人を抱えた型屋と染め専門の染屋(紺屋)があり,その専門性は粋を極めた技となって,重要無形文化財技術保持者(人間国宝)を生み出すことになる。紅型はデザインから染めに至るまで,全ての工程を一人でできる技能を持っている。 (5)色彩:伊勢型,会津型は、おおむね単色が多い。これに対して紅型は、顔料を使った多色染である。紅型は、[紅入色型染]を略して[紅型]と呼ぶように、小紋様の小紋紅型などは、[色差し][色配り][隈取り][二度刷り]など多色の色使いである。「隈取り」は紅型のみにみられる技法である。 (6)染色法:紅型は,捺染法であり,伊勢型,会津型は浸染法である。 (7)文様:紅型は古典柄など図案化されていて、伊勢型は繊細であり、会津型は複数の染型でひとつの文様をつくるなど技巧的である。 (8)美意識:紅型の美意識は,伊勢型から生まれた江戸小紋や,中形にみられるような粋好みの美意識ともちがう。これまで見てきた紅型の隈取りや白地彫り染地彫りがひとつの型紙に共存しているという特徴が幻想的で自由で明るい紅型の美意識を生み出しているといえる。 (9)教育の現場で:「紅型」を地域教材として取り上げ,現職教員で大学院生の島袋麻美の教育実践を指導し,教育成果を得ている。
|