研究概要 |
平成17年度は大学生8名を対象に,また,平成18年度は中学1年生の生徒10名を対象にして,学校用家具使用時の動作分析と筋活動の計測を行った。使用した机・椅子は,JIS規格の2号から6号までの号数で高さの調節が可能な木製机・椅子である。被験者の身長から割り出した適正号数の机・椅子の高さを基準とし,その高さから1号分高い高さと,1号分低い高さの机・椅子も使用し,この3段階に高さを変えて,体圧分布測定システムを用い,着座時の荷重値の変化,荷重分布重心の移動等を分析した。また,同時に,表面筋電計を用いて筋活動を調べるために,脊柱起立筋および僧帽筋に電極を取り付けて計測を行い,RMS法の分析手法で筋疲労について検討した。被験者には同じ号数の机・椅子で書き写し作業を行ってもらい,その後,机・椅子に関する意識アンケート調査を行った。 この実験の結果,大学生対象の場合,脊柱起立筋では,適正号数よりも1号分高い机・椅子を使用したときに他の高さよりも疲労度が比較的小さくなったが,僧帽筋では顕著な差はみられなかった。また,中学生では,脊柱起立筋と僧帽筋では特に差はなかった。大学生の場合,適正号数の机・椅子を使用した場合に,身体の荷重分布重心の動きが抑えられ,1号分高い机・椅子を使用した場合に,座面の座骨結節点周辺部の体圧が大腿部の裏側へ移動し圧力が分散されることがわかった。中学生の場合は3段階の高さの違いによる荷重分布重心の移動距離の変化は特にみられなかった。また,アンケートによる意識調査から,大学生の場合は,適正号数の机・椅子を使用したときに適切な高さだと回答する人が多く,中学生の場合は1号分高い机・椅子が適切な高さだという回答が多かった。大学生と中学生ともに,1号だけ低い机・椅子を使用した場合に最も疲れ,大学生の場合は特に腰と右肩に,中学生の場合は右肩と手・腕に疲れを訴える回答が多くなった。
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