研究概要 |
快適な移住空間創造のために,衣類や住空間設備品に各種の色と,高い消臭・抗菌機能の付与,およびその消臭機構の解明を目的に本研究を計画した.17年度は含銅直接染料C. I. Direct Blue 200(染料DB)と銅塩で,素材や前処理の異なる6種類の綿を先媒染(pre),染色(D),後媒染(aft)し,エチルメルカプタン(EM)に対する消臭性を検討した.重ね媒染(pre+D+aft)により,preで含銅量が多かった生機メリヤス綿布,Dで染着量の多かったマーセル化メリヤス綿布の含銅量が最も多くなった.消臭性は重ね媒染布が大きく,特にaftの効果が顕著だった.含銅量と消臭性には相関関係が認められた.綿を直接染料で媒染する場合,マーセル化メリヤス綿布の使用により鮮明で,高消臭性の染色布を得ることができる.18年度は含銅タイプの反応染料(C. I. Reactive Blue 237(染料B),Blue 71(染料T))と銅塩で2種類のメリヤス綿布を媒染し,染料の種類,濃度,媒染方法がEMの消臭に及ぼす影響の検討と,今回購入した島津ガスクロマトグラフGC-2014ATによる消臭機構の解明を行った.染色した未マーセルメリヤス綿布の含銅量は1%o.w.f.<5%o.w.f.,D<pre+D<pre<D+aftの順であった.preで吸着した銅イオンは続くDで染料と置換され,一部脱着した.染色後,aftにより銅が結合した.消臭性はD<pre+D<D+aft<preの順であった.反応染料の場合,消臭性は含銅量に必ずしも比例せず,初めから染料に結合している銅より,直接綿と結合する銅や,染料に後から配位した銅の効果が大きかった.少ない含銅量で高い消臭性を示す媒染染色布の調製には,未マーセルメリヤス綿布に5%o.w.f.の染料Tで染色し,後媒染が適当と考えられる.染料DBと銅塩で重ね媒染したブロード綿糸をカラムに詰めてガスクロマトグラフに装着し,EMを注入した結果,EMとジエチルジスルフィド(DEDS)と思われる2本のピークが見られた.EMの消臭機構は,EMのDEDSへの酸化反応およびDEDSの繊維への吸着と考えられる.
|