研究概要 |
1.腫瘍壊死因子(TNF)誘導ネクローシスに対するドコサヘキサエン酸(DHA)の効果: マウス繊維芽肉腫細胞L929に種々の不飽和脂肪酸を取り込ませ、TNFで刺激した所、DHAをはじめ、いくつかの脂肪酸により細胞死が抑制された。その抑制効果の大きさはDHA>DPAn-3〓EPA>AA〓20:3(n-6)〓22:4(n-6)であった。アネキシンV・プロピジウムイオダイド・ヘキスト染色やDNAラダーの検出から,L929細胞はTNFにより主としてネクローシスを誘導されていることが確かめられた。以上よりDHAはTNF誘導アポトーシスばかりではなく,ネクローシスも阻害する効果を持ち,二つの細胞 死のモードに共通したシグナルを阻害することで,細胞死を伴う種々の組織障害を軽減する効果をもつ可能性が示唆された。 2.TNF誘導アポトーシスに対する抗酸化物質の効果と細胞内グルタチオンレベルとの関連 抗酸化作用をもつメルカプトエタノール(2-ME),N-アセチルシステイン(NAC)がTNF誘導アポトーシスを阻害することがわかった。さらにそのメカニズムを調べる目的で,細胞内グルタチオンレベルを測定したところ,2-MeやNAC処理で細胞内グルタチオンレベルが上昇した.しかし,アポトーシスの阻害活性とグルタチオンレベルの上昇と比例関係は見られないこと等から,抗酸化剤のアポトーシス阻害作用は,細胞内グルタチオンレベルのみでは説明できないことがわかった. 3.メチル水銀の細胞毒性に対するDHAの効果 PC12細胞のメチル水銀による細胞死に対する脂肪酸の効果を調べた.しかし,TNF等によるアポトーシスやネクローシスと異なり,あらかじめDHAを取り込ませた場合に,メチル水銀による細胞死はむしろ促進された.このことから,メチル水銀は,他の薬剤とは異なったメカニズムで細胞死を誘導する可能性が示唆された。
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