研究概要 |
共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)は,微小なピンホールによって非焦点情報を物理的に排除するため,「厚みのある試料」の観察を可能とする。この特徴を利用した食品の新しい観察方法の開発を目的とした。研究成果は,1.タンパク質のゲル構造の観察方法と定量化,2.デンプン粒の観察方法,および物性との関係について得られた。まず,タンパク質のゲル構造の観察方法と定量化については,豆腐をモデルとして,ゲル構造の観察をおこなった。実験は,分離大豆タンパク質(SPI)とその主要成分である11Sグロブリン(11S)についておこなった。SPIと11Sのゲルは,CLSM画像からフラクタル解析が可能であることを示し,フラクタル次元を求めた。凝集体の構造はクラスター・クラスター凝集(CCA)によって形成されると考えられた。また,CLSM画像からゲルの凝集体の密度を求めたところ,11SはSPIよりも凝集体の密度が高いことを明らかにした。次に,デンプン粒の観察方法,および物性との関係については以下のような成果が得られた。観察方法については,(1)デンプン粒の粒径(大きさ)とデンプン粒の内部構造が観察可能であること,(2)デンプン粒の粒径変化については画像解析を用いて定量化が可能になったこと,3)4種類の蛍光試薬を用いて比較検討した結果から,FITCが糊化後のデンプン粒観察には最も優れていることを明らかにした。物性との関係については,デンプン粒の観察結果と力学物性測定から得られるtanδ値はよく対応することを示した。以上,食品の主要成分であるタンパク質とデンプンについて,CLSMによる観察方法を研究し,新しい知見を得ることができた。
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