研究概要 |
日本の教育改革は,今日の社会の重要な課題である.その問題点の背景に,大学受験が,初等教育,中等教育に大きい影響を与えてきたことによることも指摘されてきた.高等専門学校は,「大学受験の弊害」を避け,後期中等教育と高等教育を結合し,5年間一貫教育の技術者養成制度として1962年に発足した.約45年間,産業界,教育界,社会の支持や批判の中で,高等専門学校の改革は,重ねられてきた.特に近年,精力的に取り組まれている「創造教育」は,多くの分野から注目されている. 初年度は,「創造教育の教育的・社会的意義」を明らかにするため,「全高等専門学校」62校に対して,アンケート調査を行ない,44校(回答率77%)から210件の回答を得た.先行する研究として,日本高専学会出版「創造教育」誌に掲載された44編の論文と比較・検討を行い,考察を行なった.その結果,高専における創造教育を「水平的連携:(大学,企業,地域,医療・介護)」と「垂直的連携:前期(幼児,小学校,中学校,高等学校),後期(社会教育)」に分類できる事を示した.高等専門学校はこれらの連携の中核としての「好位置」を占め,創造教育の主導的役割が可能であることを導いた. 最終年度は,大学を対象とした調査を行った.アンケート依頼は,「工学部の規模が比較的大きい」あるいは「戦前の工業専門学校,高等工業の歴史を持つ」大学等67校に行なった.回答は,28校(44%)から61件があった.内容を比較し,それぞれの特徴を明らかにした.その結果,高専は,1年生から専攻科まで,バランス良く配置されていることに対し,大学は「地域,企業,大学,自治体」と各分野にわたる連携活動が活発であることがわかった. これらの調査結果により,創造教育の普及は,今日の教育と社会の活性化に重要な役割を果すことが明らかとなった.この目的を達成するために,創造教育のコンテンツを電子化し,Web上に搭載した「創造教育館」の設立をめざすことを提案した.
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