研究概要 |
本研究の目的は,ICT環境において説明技能の指導法を実践するために必要な基礎知見を得ることである。3年間行った研究は,・説明技能の指導とその評価方法,・ICTで多用される非連続型テキストの理解,・プレゼンテーション技能の指導,の3つである。 説明技能の指導とその評価方法では,説明文の作文練習を大学生に4ヶ月間実施した結果,特定の読み手を想定して説明文を書き直すrewrite練習が,最も効果があった。この結果に基づき,まず,児童向けに,説明文作文時に必要なメタ認知的知識の様相を測定する質問項目を作成し,その妥当性を確認した。そして,説明文の作文技能との関連をみた結果,説明のために「読み手を意識する」という重要な説明技能が,メタ認知的知識と強く関連していることが明らかになった。 非連続型テキストの理解と説明技能では,未だ実態がよくわかっていない非連続型テキスト(図表を含む文書)の理解と産出の様相について,いろいろな教科,年齢,技能の側面から検討を重ねた。まず,児童を対象に非連続型テキストのわかりやすさ判断の影響要因を調べた結果,学習スタイルとの関連を見いだすことができた。また,眼球運動測定によって中学校社会科歴史教科書の読み取りのプロセスを詳細に分析した結果,文章と図表部分の見方のパターンには大きな個人差があり,それが非連続型テキスト全体の理解と関係していることが明らかになった。 プレゼンテーション技能の指導では,児童と大学生を対象に,長期にわたるプレゼンテーション指導の前後で自己評価及び他者評価の重視点の変化を明らかにした。その結果,児童・大学生とも指導の重視点は大きく変容し,プレゼンテーションの「テーマ」「資料の厳選」「結論の明確さ」「リハーサル」が,指導のとともにその重要度の認識が高まった。
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