研究概要 |
本研究の成果は以下のようにまとめられる. 平成17年度においては,創造性に関する心理学的知見に基づいた授業を,中部大学の創成科目の受講生131名に対して実践した.その実践は,学習者がプログラミングのための環境構築と基礎教育を受ける導入活動,LEGO Mindstormsを用いてグループでロボットを製作し,タイムトライアル競技に取り組む創造活動,そして,グループの創造活動の記録をもとに,創造プロセスをチャートとしてまとめ,自己の創造活動についての評価を行うリフレクション活動の3つから構成された. 創成科目の実践後,この教育の学習効果について,アンケートによる主観的評価とデザイン課題を用いた客観的評価を実施した.その結果から,本創成科目で実施した創造性教育によって,学習者の創造活動が向上していることが確認された.特に,後者の客観的評価では,学習者のアイデア産出スキルの変化を客観的に評価した結果,学習者のアイデア産出量が,アイデア数,幅,深さともに,授業の後に増加していることが確認された.また,アイデア産出の系列を分析した結果,創造活動に重要とされるリフレクティブな活動を行った学習者が,授業後増加していることが確認された. 平成18年度においては,前述した結果を踏まえて,授業デザインの改善,学習効果の新たな評価方法の考案,授業支援ツールの改良を行った授業が実施された.評価結果からは平成17年度の実践において確認された学習効果が同様に確認され,さらに,リフレクションに関する情報量の増加が確認された.これは,作業報告書の作成,アップロードの義務化等の授業デザインの改善により,学習者が自己の活動を容易かつ詳細に記録することができるようになった効果といえる. 以上のように,本研究によって提案された授業のデザインによって,創造性向上のための学習者のスキルに一定の向上が確認されたといえる.
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