研究概要 |
本研究では,地理情報システム(GIS)を利用して,建物レベルにおける施設への近接性に関する研究を行い,おもに次のような成果を得た.1.東京都足立区において,建物1棟1棟からコンビニエンスストア(以下,コンビニ)への近接性を「最寄り施設への最短道路距離」から測定し,その分布を考察した結果,道路網のパターン,コンビニと道路網との位置関係,建物と道路網との位置関係,コンビニ同士の位置関係などによって規定されることが明らかになった.2.建物レベルと町丁目レベルとの近接性を比較すると,町丁目内の近接性の差異を標準偏差からみた場合,標準偏差が最大の町丁目は,研究地域全体の近接性の差異に匹敵するほどであった.また,施設は町丁目の中心点に立地することは少ないため,町丁目の中心点で近接性を測定すると建物レベルより近接性は悪くなる傾向にあった.3.建物レベルの近接性に関する事例研究として,建物階層別の近接性の相違,新駅開通にともなう近接性の変化,京都市中心部におけるホテルの評価を行った.4.道路の交通条件と交通規制を考慮した近接性の測定では,野外でArcPadとGPSを使用して道路属性データを取得し,エッジの回線を利用して研究室のサーバーに送信するシステムの構築を試みた.また,研究地域では,最短道路距離と交通条件や交通規制を考慮した場合とでは,所要時間からみた近接性は約2倍に増加した.5.ArcObjectを利用して近接性測定システムを構築した.システムは,利用者が近接性を調べたい建物をデジタル地図上でクリックするとバッファを発生し,バッファ内にある施設を数えて表示するとともに,バッファ内の人口を面積按分で算出して人口と施設面積を考慮した近接性の指数を算出する.さらに,GIS Serverのテンプレートを使用してWebでの配信を試みた.
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