研究課題
基盤研究(C)
本研究では、亜熱帯海域における極低濃度の栄養塩類とpCO_2と同時に連続計測することにより、pCO_2変動が微小な栄養塩類濃度変動を伴うものか否かを明らかにすることを目的とした。この目的のために、平成17年度から時間分解能が十分高い溶存二酸化炭素分圧(pCO_2)連続計測システムの試作と試験を行い、平成18年度にはガス交換係数の大きい透過膜モジュールを用いたフロースルー型の気液平衡器を製作し、最終的に十分な応答速度を持つ連続計測システムを完成させた。このシステムを用いて東京海洋大学・海鷹丸により東京-シドニー間(平成18年11月29日〜12月14日)で、西部太平洋亜熱帯海域(34°N〜30°S、141°〜155°E)における表面水連続観測を実施した。pCO_2データの他、分光法によるpHの連続計測データ、栄養塩類の高感度連続計測データを得て、平成19年度にかけてデータ解析を進めた。pCO_2は320〜392μatmの範囲内で、高緯度域で低く低緯度域で高くなる傾向を示したが、数十kmないし数百kmの比較的小さな空間スケールでも変動していた。硝酸塩+亜硝酸塩、アンモニウム塩の濃度は海域全体できわめて低く、大部分は20nM以下であった。リン酸塩濃度は海域による変化が顕著で、最大190nMまでの範囲で変動した。pCO_2の小さな空間スケールの変動は3つのパターンに分類できた。まず水温低下、塩分上昇に伴ってpCO_2は上昇、pHは低下し、栄養塩類濃度が上昇したパターンがあった。これは湧昇または鉛直混合の影響と考えられた。次ぎに塩分の急激な低下を伴った変動で、海水の希釈によって全炭酸が低下し、それに伴ってpCO_2が低下したものと考えられた。最後に最も多かったのがリン酸塩とpCO_2が対応して変動するパターンで、生物活動による消費を反映したと考えられた。
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