研究概要 |
循環型の都市形成に向けてのシステム選択と評価のあり方を,社会の多様性を踏まえて検討するために,廃棄物のリサイクルについて,選択の前提となる情報(リスク情報を含む)のあり方を明らかにした。次にこれらの情報を合意形成につなげるために,複数の基準によって代替案を評価する手法である多基準分析について検討し,その応用であり,異なる立場の人々の選好をマッピングすることによって評価対象の抱える論点を明らかにする手法として「可視化のための多基準分析」を活用することによって,システム選択における合意形成支援の可能性を探った。 循環型社会の構築に向けて,事業活動におけるリサイクル過程に注目し,様々な主体が環境コミュニケーションをはかるツールとどのように係わり,活用していくのが望ましいのかについて,環境報告書およびCSR報告書をもとに事業活動の各過程におけるリサイクル事例を検討した。企業がCSR報告書を作成する第一の理由は「リスクマネジメント」とされ,様々なステークホルダーとのコミュニケーションにより説明責任を果たそうとする姿勢が示されている。次に,「可視化」に焦点を当て,可視化研究のレビューを行ったうえで,評価と意思決定における「可視化」の構造について,「可視化」に対する立場と目的,「可視化」の段階,「可視化」の対象と手法,のそれぞれの観点から整理を試み,課題について考察した。様々な分野で「可視化」が求められ,その解釈と判断,それにもとづいた行動が「可視化」の受け手に求められることになるだろう。この流れ自体は望ましい方向であると言えるだろうが,可視化しようとする部分に光をあてることで,不可視化されてしまう影の部分ができてしまう懸念を忘れるわけにはいかない。
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