研究概要 |
細胞のがん化は,突然変異と遺伝的不安定化の二段階でおこると考えられている。環境発がん物質の多くはこの第一段階に寄与し,突然変異を介しがん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化をおこす。しかしヒトなどの二倍体細胞では,両方のアレルの不活性化が細胞がん化に必要であるため,遺伝的不安定化も重要である。本申請では,この遺伝的不安定性の指標としてLoss of Heterozygosity (LOH)を採用し,1)酵母二倍体細胞を用いたLOH誘導物質のスクリーニング法の高感度化,2)非変異原性発がん物質のLOH誘導性の検討,3)陽性物質のLOH誘導機構の解明を目指した。その結果,1)酵母細胞の細胞壁をザイモリエースにより破壊し化学物質の取り込みを高め,高感度化を図ったが期待した結果は得られなかった、2)24種の非変異原性発がん物質のLOH誘発性を検討し、11種が陽性で、いずれも主として染色体喪失によることを明らかにした。さらに3)陽性モデル物質としてOPPの代謝物、Phenyl hydroquinone (PHQ)について誘発機構を、細胞周期や染色体分配機能などへの影響に注目し検討した。その結果、PHQがa)FACS analysisにおいてG1期の酵母細胞に対しG1 arrest、S期の細胞に対してG2/M arrestを引き起こす、b)in vitroでチューブリンと結合する、c)in vitroチューブリン重合/解離系で、解離を阻害する、d)M期後期でarrestした細胞では紡錘体が極めて長い、e)metha phaseで分解されるはずのPds1が分解されず、それに伴って核の分配なども起こらないことなどを観察した。
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