研究概要 |
本研究では,「低用量問題」で特に注目される前立腺発達に対する内分泌かく乱作用の基礎を明らかにすることを目的とした。まず,前立腺の新生時期発達に関わるアンドロゲン応答性を明らかにするため,未解明であった分泌タンパク質を同定した。さらにエストロゲンとの相互作用を解析するためエストロゲン受容体βの発現機構を,in vivoおよびin vivoのプロモーター解析により明らかにした。さらにベンゾフェノン類,臭素系難燃剤の実際の作用を検討した。 1)新生仔における前立腺機能発達マーカーとしての分泌タンパク質同定:前立腺の分泌タンパク質をマススペクトロメトリー法により同定し,その全容を明らかにした。これら新規に同定された分泌タンパク質の発現をmRNAレベルで定量解析することで,内分泌かく乱物質の前立腺新生児発達に与える影響を迅速に解析することができるようになった。 2)エストロゲン受容体発現メカニズム:前立腺上皮細胞における主要なエストロゲン受容体であるβ型のプロモーターをマウスで同定した。さらに,このプロモーターレポーターを導入したトランスジェニックマウスを作成した。解析の結果,このプロモーターは精巣特異的な発現を支配していたものの,前立腺における発現を単独では制御してないことが明らかになった。 3)ベンゾフェノン類および臭素系難燃剤のアンドロゲン作用:「日焼け止め」の成分であるベンゾフェノン類のアンドロゲン活性について,in vitroおよび前立腺モデルで検討したところ,アゴニスト/アンタゴニズト活性が明らかになった。また,臭素系難燃剤の一部も抗アンドロゲン活性を示した。前立腺において単剤でアンドロゲン/エストロゲンかく乱を引き起こす可能性が考えられた。 本研究の成果を土台に,今後,新生時期のアンドロゲン応答性=前立腺機能発達に対するエストロゲンの修飾作用と内分泌かく乱作用のメカニズムを明らかにしたい。
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