研究概要 |
1.ノニルフェノール異性体の構造 内分泌撹乱物質といわれている市販4-ノニルフェノール(NP)異性体混合物について,GC-PFCあるいはHPLCによる分離・精製をおこない,NMRやMSスペクトルを詳細に解析することにより以下の15種の異性体(NP-A〜P)が成分として含まれていることを明らかにした。 NP-A: 4-(2,4-dimethylheptan-4-yl)phenol, NP-B: 4-(2,4-dimethylheptan-2-yl)phenol, NP-C: 4-(3,6-dimethylheptan-3-yl)phenol, NP-D: 4-(4-ethyl-2-methylhexan-2-yl)phenol, NP-E (diastereomer of NP-G): 4-(3,5-dimethylheptan-3-yl)phenol, NP-F: 4-(2,5-dimethylheptan-2-yl)phenol, NP-G (diastereomer of NP-E) NP-H: 4-(4-methyloctan-4-yl)phenol, NP-I: 4-(3-ethyl-2-methylhexan-2-yl)phenol, NP-J (diastereomer of NP-L): 4-(3,4-dimethylheptan-4-yl)phenol, NP-K (diastereomer of NP-P): 4-(3,4-dimethylheptan-3-yl)phenol, NP-L (diastereomer of NP-J), NP-M: 4-(2,3-dimethylheptan-2-yl)phenol, NP-N: 4-(3-methyloctan-3-yl)phenol, NP-P (diastereomer of NP-K) 2.ノニルフェノール異性体の合成とエストロゲン様活性 1.において構造決定された異性体について2つの方法により各異性体の合成を試みた結果,15種すべてのNP異性体について合成を行うことに成功した。2つの合成法のうち1つは4-hydroxy-acetophenoneを出発物質とするもので特許出願中である。また,BF3・Et2O存在下phenolとnonylalcoho1のFriedel-Crafts型アルキル化反応により,その他のNP異性体についても合成を行うこができた。以上のように,本研究において構造が明らかとなったすべてのNP異性体について,異性体別に調製する方法を確立することができた。この研究結果は,環境リスク評価を行う際の標準品が異性体別に供給可能となったという点でも意味のあることだと考えられる。各異性体についてヒトエストロゲン受容体に対する結合活性(酵母two-hybrid法)を検討したところ,NP-1が比較的強い活性(エストラジオールの約1/250)を示した。さらに,NP-Iについて光学分割を行い,その絶対構造を明らかにするとともに光学活性体間でのヒトエストロゲン受容体結合能を比較したが差は認められなかった。
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