研究概要 |
メソ多孔体は原子スケールでは規則構造をもたないアモルファスであるが,そのアモルファスがメソスケールの細孔構造を形成している。これまで、電子線結晶学やX線回折を駆使して,メソ孔の配列や概形はわかったが,メソ孔内に吸着された分子の情報は明らかにされていなかった。本研究の目的は,高輝度放射光回折実験とマキシマムエントロピー法(MEM)を用いて,メソ多孔体に吸着されたガス分子の詳細な構造情報を得ることである。 1次元メソ孔をもつMCM-41に対して,メソ孔形状をサイズや密度などをパラメータとして解析的に表わし,回折強度のシミュレーションを行った。そして,放射光回折データと比較して焼成前後の細孔の大きさや形状の変化に関する情報を得た。 3次元のメソ孔をもつMCM-48について放射光粉末回折データのガス吸着その場測定を行った。 ガス分子を吸着していないMCM-48の回折データに対して,従来の解析法で得たメソ孔の概形と,吸着等温線から見積もられる細孔容積とを合わせて,結晶構造因子のスケーリングを行い,MEMによりメソ孔形状をイメージングすることに成功した。得られた電子密度分布は従来法に比べて非常にクリアであり,これまでメソ孔の大きさは小さめに見積もられていたと考えられる。この手法は,より複雑なメソ孔のネットワーク構造,さらにはメソ孔表面の微細構造の解析に有効であると考えられる。 ガス吸着データは,ガス圧力の増加に伴い,明瞭な回折強度の変化が観測された。このデータを解析し,電子密度の変化として,細孔壁への吸着の過程を観測することができた。すなわち,低圧部での単分子層吸着状態から閾値圧力における毛細管凝集,さらに飽和吸着状態に至る過程の吸着分子の構造情報を得ることができた。位相の取り扱いに今後検討が必要であるが,この手法はガス吸着状態の観測手法として有効であると期待される。
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