研究概要 |
本研究は,昆虫の構造と機能を規範として,マイクロメートルオーダの可動機構と,ナノメートルオーダの表面構造の組み合わせることにより,付加価値の高いナノ・マイクロ複合システムを開発することを目的としており,以下の4つの研究が行われた. 「アリを規範とした壁面付着機構の研究」では,アリの脚先端から分泌される液体が壁面付着に深く関与していることを示し,マイクロ加工技術を利用して表面から微量の液体を分泌する「付着パッド」を開発し,小型ロボットを壁面に付着させることに成功した.この結果より,表面の微細構造によりマイクロ機構の付着性を制御できることを示した. 「アメンボロボットの研究」では,円筒面上に微細な構造を加工し,撥水性を高める技術を開発した.この加工をロボットの支持脚表面に施すことにより,表面張力で水面に浮き,自立的に移動可能なアメンボロボットを開発した. 「3次元マイクロ機構の自動組み立ての研究」では,ポリマー材料の熱収縮を利用してヒンジ機構を屈曲させ,立体的なマイクロ可動機構を自動的に組み立てる技術を開発した.また,組み立てたヒンジ機構を,磁場などを用いて大きく駆動できることを示した. 「生体分子モータを利用したマイクロ回転機構の研究」では,生体分子モータの一種である微小管を,微小流路を用いて一定の方向に円状配向し,ガラス基板上に固定することに成功した.この微小管のレールの上にキネシンをコーティングしたマイクロ回転子を導入することで,回転機構が実現できると考えられ,生体エネルギーによりマイクロ部品を任意の軌道上で駆動できる可能性を示した.
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