研究概要 |
本研究では,最初に製造企業の生産スケジューリングの担当者を訪問し,実務で使用されている生産計画システム,計画手順やスケジュールの評価尺度,計画と実際の一致の度合いやスケジューリングの難しさなどについて聞き取り調査を実施した.10社からの回答内容にその他の調査で得られた内容も含めて検討したところ,スケジューラを中心とした協働的な生産計画が多くの企業で採用されていることが明らかとなった.具体的には,スケジューラが生産計画システムを使って計画を決定する際に,営業部門の担当者や現場作業者と密に情報を交換していること,また,詳細な計画決定は現場の職長に適宜委ねつつ,工場全体としての高い生産性実現に向けて腐心していることが明らかとなった.このことは,スケジューラが,現状の正確な把握→計画作成→評価,という手順を何度か繰り返すことで,必須要件を満たしつつ,運用時に問題が生じにくい計画を見つけ出そうとしていることを示していると考えられる.この思考・行動のフローに必要とされる代表的情報を列挙し,これらを整理してスケジューラの基本的な思考パターンとした.最後に,スケジューラの役割の重要性が必ずしも正しく評価されていないとの問題意識に基づき,システムダイナミックスによるスケジューラの振る舞いのモデル化を行った.仮想的な設定のもとでのシミュレーション実験より,スケジューラが現場との情報交換を密にしていることの重要性が数値的に明らかとなった.
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