研究概要 |
ビフィズス菌は、下痢防止・便秘改善といった整腸作用、免疫活性化作用、皮膚アレルギー低減などの効果を持つことが報告されている。ヒトの健康維持に大きく関わっているビフィズス菌は近年たいへん注目されている。今回は、成人大腸内の主要菌株であるB.adolescentisに注目し、その基準株であるATCC15703株のゲノム解析を行った。 約27,000クローンを解析し16.2Mbの配列情報を得た。その結果、完全長のゲノム配列を得ることに成功した。本菌のゲノムサイズは2,089,645bpであり、GC含量は59%であった。ゲノム解析の結果、推定のORF数は2,094個で、そのうち遺伝子をコードするProtein coding sequence (CDS)は1,631個、tRNAは54個、rRNAオペロンは5コピー存在した。B.longum NCC2705との比較ゲノム解析を行った結果、両菌共通の遺伝子候補は1203個、本菌独自の遺伝子候補は428個検出された。そのうち機能が推定されたものは290個、機能未知のものは138個であった。糖代謝関連遺伝子について、KEGGのpathwayマップにて確認したところ、本菌は様々な糖を利用できることが示唆された。 また、最近いくつかのビフィズス菌種でヒト腸管表層の糖鎖や、ミルク由来の糖を利用するための酵素系を有していることが報告されているが、B.adolescentisにはこれらが存在せず、むしろ植物由来の糖鎖を分解利用する能力が有り、他のビフィズス菌とは異なる大腸内適応戦略をとっている事が示唆された。
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