研究課題
基盤研究(C)
Pseudomonas属細菌MIS 38株が産生する環状リポペプチドArthrofactin(AF)極めて高活性の界面活性を有すると共に、一部の有害微生物に対する生育阻害活性をもつ。AF合成酵素は3つのサブユニット(ArfA/B/C)から構成される。興味深いことにArfCのC末端には産物ペプチドの合成酵素からの切り出しに機能するチオエステラーゼドメイン(TE)が2つ存在する。本研究では、まずこれらのTEが合成反応にどのように係わっているのかを解析した。当該遺伝子部分を大腸菌内でクローニングした後、PCR法を用いて部位特異的突然変異遺伝子を構築した。さらにこの変異遺伝子を相同性組み換え法によりMIS38染色体に戻した。こうして、4種類の活性中心変異酵素を生産しAF生産性を調べた。その結果、TE1変異酵素はAF生産性を完全に失っていた。一方、TE2変異酵素は野生型の5±1%の活性を保持していた。また生産されたAFは野生酵素由来のものと同一の構造であることを確認した。以上の結果から、TE1が環状化反応と産物の遊離に必須であり、TE2は本質的に重要ではないことを明らかにした。次に合成遺伝子の発現制御機構を探るために接合伝達を用いてTn5トランスポゾンをMIS38株染色体に導入し、変異体ライブラリーを作製した。環状リポペプチドの産生能の低下に伴う細胞機能の変化や、コロニー形状の違いを指標にして、合成系に異常を持つ変異体を多数取得した。ほとんどの挿入変異は、合成酵素Arf遺伝子領域内に検出されたが、その他の変異遺伝子解析から環境応答型の転写因子や、熱応答因子、およびストレス応答を多面制御するシグナル因子が、環状リポペプチドの合成系に関わることを明らかにした。以上の成果は環状リポペプチド合成機構の解明に大きく貢献するものである。
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Chem. Bio. Chem. (印刷中)
FEMS Microbiol. Lett. 252
ページ: 143-151
FEMS Microbiology Letters 252
Chem. Bio. Chem. (In press)