研究概要 |
本研究では、3種類の放線菌由来C-配糖化抗生物質を取り上げ、その配糖化様式の機構解析を進めることを基盤としている。ベンゾイソクロマンキノン(BIQ)系抗生物質生合成に関して以下の知見を得た。 (1)メダマイシン(MED)に含まれるデオキシ糖アンゴロサミン(ANG)は、グルコース1リン酸を出発とした6段階の酵素反応によりヌクレオチド糖(NDP-糖)として生成される。Med-14〜Med-20の各遺伝子をpET系腸菌発現ベクターに挿入し、異種発現系を構築し、Med-17及びMed-18に機能発現に成功した。また、基本骨格生成に関わるMed-12の機能証明も達成した。 (2)炭素鎖伸張から立体特異的閉環に関わる還元酵素RED1について、酵素化学的解析を行った。定法により大腸菌組換えタンパクを調製し、カラム精製した。また、本精製酵素液を用い、各種合成基質アナログとのin vitro反応を行った。酵素基質の消費速度並びに各種酵素学的kineticsパラメーターの測定結果から、RED1が認識する2環性中間体基質は、酵素タンパク結合型ではなくカルボン酸型である事が示唆された。この事からACTの生合成経路中においても、RED1が認識するのは酵素非結合型の2環性中間体であることが推察された。本知見は、BIQ配糖化の受容体構造の形成についての重要な知見である。 (3)アクチノロジン(ACT)生合成に関わるactVA-5,6の遺伝子破壊体を作成し、菌体培養後の表現型や液体培養後の代謝産物のプロフィール解析からin vivoでの両酵素の機能を検討した。actVA-6単独の破壊体は野生株とほぼ同様の表現型を示し、ActVA-6のACT生合成への寄与は、少なくともin vivoではわずかであることが示唆された。一方、翻訳共役しているactVA-5,6を併せて破壊した菌体はACTの代わりに黄色色素を生産し、新規shunt productであるアクチノベリロンと構造決定した。この構造からAct-VA5のC-6酸化へ関与されること、C-3,C-15の還元反応が6位酸化の直前に生じることも示唆された。C-配糖化の受容体アグリコンの骨格形成に関して重要な知見を得たと考えている。
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