研究課題
基盤研究(C)
アカウミガメでは、通常受精卵の頂点付近から胚の固着と卵殻の白濁が進行した。しかし、転卵区ばかりでなく通常の孵卵条件下の受精卵でも胚が卵殻上部の位置で固着せず、孵卵15日目において卵殻下部の位置で発生が進行しているものも観察できた。そのため、初期胚は必ずしも卵上部で固着し発生が進行するとは限らないものと考えられた。また、アカウミガメの受精卵において移植時に生じる胚発生の停止は、産卵後12時間以上から約40日目までに起こるものと考えられた。孵卵に必要な温度と砂中水分含量は、自然下では降水量と密接に関係しており、積算温度は、1800℃を超えると孵化に至ることが確認できた。一方、飼育水槽内の水温が低下した時期に雌のエストラジオール-17β濃度、雄のテストステロン濃度の上昇が一致する動態が見られ、雌の血中エストラジオール17β濃度および雄の血中テストステロン濃度は、飼育海水温が低下する9月から2月にかけて上昇し、飼育海水温が上昇する5月から7月にかけて低下した。なお、雌のプロジェステロン濃度は、2月から5月にかけて上昇した。本研究では、産卵してもほとんど孵化が期待できない場合の移植時期と方法を明らかにすることができ、また雌雄のウミガメの産卵生理を内分泌学的に捉えることができた。希少動物種であるアカウミガメが北太平洋で唯一の産卵場所である日本の海岸で、できる限り多くのアカウミガメを保護・保全するために、この研究が役立つものと期待される。
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第14回希少動物人工繁殖研究会議資料集
ページ: 25-26