研究概要 |
交付申請書の「研究の目的・研究計画」に対応した研究実績の概要は以下の通りである。 1.ホッブスの物体論とスピノザのコナトゥス論との比較を通して,コナトゥスに関してホッブスがもっぱら位置の移動としての運動の意義を見いだすのに対して,スピノザはものの本質として包括的・有機的に運動を説明する方向性が見いだせる。 2.デカルトの物体的世界とスピノザの物体的世界の構成に関する比較を通して,デカルトの物体論は物体の本質を不完全性のもとに位置づける伝統的な把握であるが,スピノザの物体論は延長に無限性・完全性を認める特徴的なものであることが明らかになった。 3.スピノザのコナトゥス論の中世哲学との連関の検証については,関連する文献・先行研究の資料収集に努めるとともに,『Suarez Opera Omnia』の物体論・運動論及びヘールボールド『Meletemata philosophica』の著作における「原因性」・「実体性」に関する該当箇所の翻訳を試みた。 4.スピノザのコナトゥス論及び物体的世界の構成に基づき,スピノザ哲学の頂点である「最高善」・「第三種の認識」について検証を行った。すなわち,最高善とは「コナトゥスの自覚化」において見いだされるものであり,第三種の認識は人間存在全体の統合的本質である「コナトゥスの認識」に他ならないのことが明らかになった。
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