研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、気づかい(Sorge)という語に焦点を当てて、ハイデガー哲学を他者論として読解し、看護理論へと応用することにある。ハイデガーは、現存在(人間存在)とは常に何かを気づかっている存在であると規定し、現存在の根底に気づかいという構造を見出した。Sorgeを英訳するとcareとなる。そのため、ハイデガー哲学はケア論の観点から解釈されることがある。だが、ケアとは何か、ケアとはどうあるべきか、といった問題がハイデガーの関心事なのではない。彼は気づかいという語を、現存在の様々な行為を可能にしている現存在のあり方を言い表した存在論的概念として用いている。気づかいとは死へとかかわる存在、被投性、等々、現存在の存在論的な特徴のすべてを包摂した語である。看護行為は対人的な行為である以上、ハイデガー哲学を手がかりにして看護理論を論じようとすれば、彼が他者の存在をどのように捉えていたのかを解明する必要がある。ハイデガーは本来的な自己を提唱する。しかし彼は、現存在が単独の自己となることを志向しているのではない。彼が本来的な自己を提唱するのは、他者とのあいだに本来的な関係を築くためでもある。ハイデガーにとって、他者とは私と同じ世界に現れてくる存在である。現存在は本質的、根源的に他者との共同存在である。だからこそ、現存在は種々の人間関係や社会を築くことができるし、他者をケアすることもできるのである。他者へのケアを考えるうえで手がかりとなるのは、顧慮(Fursorge)という語である。たしかに顧慮は、現存在が他者とどう関わるべきかを言い表した価値語ではない。顧慮はあくまで、常に他者を気づかっている現存在のあり方を性格づけた存在論的概念である。だが、支援と支配を顧慮の両極端に据えるハイデガーの分析は、患者の生き方を支援していく看護行為のあり方を考えるうえでも有用である。
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