研究課題
基盤研究(C)
本研究では、二年間にわたって、19世紀中期のアメリカの詩と音楽の接点に光を当てて考察した。まず、平成17年度には、19世紀アメリカを代表する国民的詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローと、同時代に活躍したコーラス・バンド、ハッチンソン・ファミリーとの関わりを中心に研究をおこなった。とくに、ハッチンソン・ファミリーがロングフェローの詩「イクセルシオ」にメロディを付してうたった歌がどのような歌であったのか分析した。その結果、歌「イクセルシオ」は、きわめて素朴な旋律の歌であって、「単調」な「詠唱」という評価もあったにもかかわらず、広く歓迎されていたことが分かった。すなわち19世紀中期には、メロディやリズムよりも詩を重視した歌が受け入れられていたのである。大衆詩という文学が広く受け入れられた当時は、音楽の分野でも詩が大きな位置を占めていたことが分かる。さらに平成18年度には、学生歌に注目し、学生歌と大衆詩との関係について考察した。とくに19世紀の中頃から20世紀初頭にかけて、ハーバード大学で人気のあった歌「ユパイディ」に焦点を合わせて研究した。「ユパイディ」は、同じくロングフェローの詩「イクセルシオ」を使った歌だった。原詩の「イクセルシオ(いや高く)」というリフレインを、「ユパイディ、ユパイダ」という、意味不明の剽軽なサビに置き換えていた。元来、この歌は、特定の同級生や教員を即興的にからかう歌だった。したがってつねに流動的な歌詞で歌われていたが、その詩を固定化したいときに使われたのが、詩「イクセルシオ」だった。この歌は、その後、イェール大学やプリンストン大学で、さらに南北戦争中には南軍でもうたわれるようになった。大衆詩は、まさに広く知られているが故に、口承的で流動的な大衆歌を固定化させるためにも利用されていたのである。
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東北大学大学院国際文化研究科論集 第14号
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Journal of the Graduate School of International Cultural Studies 14
東北大学大学院国際文化研究科論集 14
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Journal of the Graduate School of International Cultural Studies 13
The Rising Generation 1891
KAMEI, Shunsuke, ed., An Introduction to American Cultural History, Showa-do
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英語青年 152・6