研究概要 |
1)ローマ・ガイドブック研究 18世紀のヨーロッパでは多くの人びとがローマを訪れたが、彼らの教養的目的に応えるためにおびただしい数の「イタリア・ローマガイドブックが現れた。そのなかでドイツ人に最も信頼され利用されたのが「フォルクマンのイタリアガイドブック」である。ゲーテが利用したことが知られているが、国内には所蔵されていないため、ドイツの図書館を訪れてこれを閲覧し、内容について紹介した(一部大学紀要にも発表)。これによって当時の人々が何を見ようと期待してローマへと向かったか、その「期待の地平」を明らかにした。 2)それとならんで旅行にとって重要な手引きとなった地図と都市景観図(復刻)を報告書のなかで図版として多く取り入れて紹介した。Piranesi, Vasi等のものは当時おおいに珍重されたが、今日においても当時のローマを知る上で貴重な資料である。当時の旅行者の抱いたヴィジュアルなローマ像の一端を示した。 3)18世紀後半にローマを訪れたドイツ人を編年的にリストアップした。その上で、重要な人物約20名について、ローマでの事績を調査し紹介した。美術関係者(画家、彫刻家、美術史家)がかなりの部分を占めていたことを確認することができた。 4)ローマを訪れたドイツ人たちは比較的まとまった地域に居住していた。そうした「ドイツコロニー」の具体的場所を現地で探索し、報告書で地図を交えてそれを紹介した。 5)ゲーテのイタリア紀行以外に、当時の人々の印象をつたえるものとして、作家ハインゼの作品Ardinghelloと、モーリッツの体験記からの一節を取り上げ、訳出紹介した。 6)ローマ、フランクフルト、カッセルの美術館において、18世紀のドイツ人の「古典美」の尺度となったような作品を実見し、資料を収集した。
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