研究概要 |
本研究は、従来別々に取り扱われてきた「日本資料」と「朝鮮資料」を総合的に調査、研究することにあり、そのために、諸機関が所蔵する資料を収集し、デジタル化を図ったうえで、諸資料の言語史的位置づけと総合的な研究をおこなうことにあったが,3ヵ年の研究によって次のような研究成果を得た。 1)韓国および日本の諸機関が所蔵する資料の調査と紹介 次のような資料を調査し,一部学界に知られていなかった資料を発見し紹介した。 「尊海渡海日記」,『日本往還日記』,原刊『捷解新語』(別本),『老松堂日本』,『海槎日記』、『全一道人』,酒井家文書の朝鮮関係資料,『重刊捷解新語』諸本およびその板木等。 2)「尊海渡海日記」(日本資料)に記された朝鮮語の研究 32語の仮名書き朝鮮語を分析し,初めて言語史的位置づけを行ない,音韻史上価値のあることを確認した。この結果は,論文として公刊し,本『成果報告書』の第1章に掲載した。また,「尊海渡海日記」の画像も本成果報告書にも収録した(第1章附載の関係図版集)。 3)『重刊捷解新語』(朝鮮資料)の板木調査 高麗大学校が所蔵する『重刊捷解新語』の板木60枚(120面)を現地調査し、今回初めて板木の摩滅状態、埋木の有無、重刊諸本の前後関係を考察した。この結果は,論文として公刊し,本『成果報告書』の第2章に掲載した。板木の画像は,第3章に部分的に掲載した。 4)『朝鮮王朝実録』(朝鮮資料)記載の日本語語彙の蒐集と分析 15世紀前半までの音訳日本語表記約400例程度を取り出すことができ,その分析と解読を試みた。これにより音訳語彙の言語史的価値を確認した。この結果については本『成果報告書』第4章に掲載した。
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