研究概要 |
本研究は,主に小・中学校の国語科における「共通語と方言」の単元学習や総合学習における地域学習等で,児童・生徒が自分たちの地域の生活語である方言を理解することを助け,それを指導する教師の方言理解を助け,指導材料となるような方言学習教材の作成をめざしたものである。 昨年度は,北陸地方の4地点(石川県白山市鶴来地区・同県加賀市大聖寺地区,福井県越前市・同県大野市)で方言記述調査を進め,その中間報告書として石川県内2地点の方言教材,『みんなで学ぼう!大聖寺ことば』『みんなで学ぼう!鶴来ことば』を作成した。いずれも,先に試作していた「金沢ことば」版をモデルに『みんなで学ぼう!大聖寺ことば』では70歳前後の高年層方言をもとにした会話文作成と同一文例の三世代方言訳を特色とし,『みんなで学ぼう!鶴来ことば』では会話文作成のところでの50歳代と中学生世代の2世代の比較(方言の変容がわかること)を特色とした。 今年度は,それらに続いて,昨年度から調査を継続した福井県越前市方言と,新たに調査した石川県輪島市方言についての方言教材を作成する予定であったが,期間内に教材化に十分な方言記述が終了しなかったため,それらについては,今後さらに資料を充実させた上で完成をめざすこととし,今年度の研究成果報告書としては,同時に進めていた試作版「金沢ことば」教材の会話文等の改訂に基づき,使用者から要望のあった会話文の音声CDを,金沢ネイティブ話者3名の協力を得て作成し,希望があれば教材とともに利用してもらえるようにした。本研究の成果として提出する報告書は,1年目に作成した2種の教材と2年目の1種の計3種(3冊)である。 本研究での方言教材作成は,上でも述べたように小・中学校の児童・生徒と教師の利用を想定したものであったが,この種の教材が地域で日本語教育にあたっている日本語教師の人たちからの需要が多いことも確認できた。今年度作成した『みんなで学ぼう!金沢ことば』の会話文の音声CDを作成したのは,そうした日本語教師の要望にも応えようとしたものである。 今後は,この2年間の研究成果を参考に,わかりやすくて利用価値の高い,より充実した方言教材の作成を継続したいと考えている。
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