研究課題
基盤研究(C)
英語の談話連結詞after allと日本語の談話連結詞「だって」を含む発話の意味解釈にはどのような語用論的推論が関わっているかを、言語コーパスを用いて関連性理論における手続きという概念により一義的説明を行なった。after allと「だって」の双方ともに、それらを含む発話の解釈には、これまで広く認められてきた「結論」と「根拠」に加えて、「先行想定」を含んだ3つの語用論的項が関わっており、それらの言語表現は「結論」と「先行想定」の間の認識の隔たりを埋めるように「根拠」を解釈せよという手続きを記号化しているというのが本研究での新しい主張である。この主張には、2つの談話連結詞ともに、それを含む解釈には論理という言葉では説明できない側面が関わっていることによる。after allを用いて話し手の結論への根拠づけが行なわれる場合、聞き手がその結論に対する異なる想定をもつ余地が与えられない、いわば容認させるという話し手のレトリックが根底にあるように思われる。また、「だって」を用いた場合の話し手自身の結論の正当化や相手の意見への同意や共感という発話行為においても、前者は話し手の結論に聞き手の想定を接近させる、後者は逆に聞き手の想定に話し手の想定を接近させるという、話し手の情意が伝達されている例が少なくない。近年の新用法としての同意や共感の「だって」が従来の自己正当化の「だって」とは機能が全く異なるにも関わらず同じ形式で表されるという事実は、話し手の結論と相手の想定の隔たりを最小限にしようという話し手の情意と関係している。こうした特徴はafter all、「だって」ともに、会話のコンテクストにおいて頻繁に用いられることからも明らかであろう。
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