研究概要 |
本研究は、英語の名詞化現象を研究テーマとする。統語部門で行われる名詞化の条件を大規模コーパスによって実証的に確かめることを主な目的とする。以下,主要な3つの研究を概説する。 (1)「形態論研究に対する大規模コーパスの有効性-形容詞由来の抽象名詞を例として-」要点:接尾辞-ity/-nessによる形容詞の名詞化に関して、(i)特定の基体形に対してある接辞が選択され他の接辞の付加が阻止されること、及び(ii)生産的な-ity/-ness語形成規則によって未登録の派生名詞が補充されることを、大規模コーパスを駆使して実証する。(2)"Where Does Nominalization Take Place? - An Antilexicalism Model"要点:反語彙主義の立場から名詞化の分析を提案し、大規模コーパスを使用してこれを例証する。BNCからのデータに基づいてオンラインで新造されるとみられる事象名詞を使って語彙主義の問題点を議論した後で、反語彙主・義の代表である「分散形態論」の視点から事象名詞分析し、同分析が語彙主義の問題点を解決できることを論証する。(3)「名詞形成における『変則』-語の内部に出現する機能範疇」要点:「XOの構成素に機能範疇は生起しない」という(複雑)語に課される一般的条件に反して、複合語名詞内に機能範疇が入り込んでいく過程について、2種類の事例を取り上げて背後に働く原理を実証する。具体的には、複合語名詞の第一要素に複数を示す形態素が現れる事例(e.g.stores manager)、及び複合語名詞の第一要素に前置詞が出現する事例(in-city headquarters)を取り上げ、どのような状況でなぜこの種の形式が生み出されるのか明らかにする。
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