研究課題
基盤研究(C)
Wh句の前置などの統語的移動が生じた場合には、移動の経緯を示す連鎖(chain)が形成されると考えられている。本研究では、この連鎖の形成と解釈のメカニズムについて、演算子移動、名詞句移動、および日本語スクランブリングを比較しつつ、詳細に検討した。まず、束縛関係、数量詞の作用域において観察される再構築化現象に基づいて、連鎖は、統語素性および意味素性(演算子素性、項素性、統語範疇素性等)を移動の着地点にコピーすることにより形成され、連鎖の解釈は、それぞれの素性を始点または着地点において削除することによってなされるとの仮説を提示した。この仮説により、演算子移動と名詞句移動の解釈メカニズムを正確に定式化し、スクランブリングが示す極めて特異な再構築化現象を説明することが可能となった。また、その後の研究において、それぞれの移動が削除(ellipsis)との間に異なる相互作用のパターンを示すことを明らかにし、この事実も連鎖の形成と解釈に関する仮説の帰結として説明されることを論証した。さらに、以上の研究を発展させる過程で、名詞句移動とスクランブリングを、「主語」の定義や一致現象に鑑みて詳しく比較し、前者を誘発するEPP素性をTのみならずνも有するとの結論に至った。また、日本語で観察される文左方周縁部要素の主題あるいは焦点としての解釈を、イタリア語との比較において検討し、上述した連鎖の形成と解釈に関する仮説が、文の談話構造を解明する上でも極めて有効であることを示した。最後に、日本語が一致素性の欠如という特徴を有することに注目して、一致素性の有無が移動現象に影響を与えるだけではなく、項削除の可能性をも決定するとの仮説を提示した。この研究は、現在も継続して遂行している。
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