研究概要 |
詩の文法に関して伝統的には韻律や頭韻の要請のためにゆるやかな文法(loose syntax)と考えられてきたが、Momma(1997)はKuhn's lawを批判し3つのルールを提唱している。韻律と語順の関係をattached unstressed elements,detached unstressed elements,stressed elementsの3分類でまとめている。M、Vは頭韻によりstressed elementsになり、それ以外ではdetached unstressed elementsになる。stressがない場合stressed elementの前かそれらの間〈厳密には節内の最初と2番目のstressed elementの間〉に現われる。このルールではWV、VMの両語順が現われる。頭韻するとstressed elementとなり、両語順が可能である。詩の特徴として口承定型句理論(Magoun Fry等)によって提唱されている。Ogura(2006)ではBoethiusの半行の40パーセントがfomularで構成されているとする。しかし、MV,VMがformulaに含まれ、語順決定要因は導き出されない。平成17年度は古英語頭韻詩における法助動詞と不定詞の語順に与える影響を調査し、平成18年度は調査対象を不定詞構文(定形動詞+不定詞補語)および分詞構文(助動詞プ+現在分詞または過去分詞)に拡大した。平成19年度はさらに10世紀後半の作品(古英語散文から作詩された特徴を持つ)BoethiusのDe Consolatione Philosophiaeの詩と散文を比較対象とした。結果として、他の古英語詩の作品と同様、頭韻の語順に与える影響が見られ、散文版との対応関係から詩の文法が従来議論されているよりもより厳密なものであることが明確となった。その結果を踏まえて、詩の語順決定要因の調査のための独自のデータベースの構築(使用ソフトWindows版FileMaker Pro8.5)を行った。
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