研究概要 |
本研究の目的は,第二言語としての英語の習得過程において,日本人学習者(成人)はどのようなリアルタイム処理(解析)方略を用いて文の理解を行っているのかを解明することである。特に,本研究は,日本語と生成過程が大きく異なり,そのために学習が比較的困難であると言われている「関係代名詞節構文」と「wh疑問構文」に焦点をあて,これらの構文を理解する反応時間を測定するオンライン実験を用いて第二言語学習者の文処理(解析)過程を明らかにするものである。 実験は以下のように計画された。すなわち,(1)The lady who(m)I employed last month works hard.および「下接の条件」の違反である(2)*This is the house which we heard the news that Dick bought.のような文を用いて、Super Labにより自己ペース(self-paced reading)の読解タスクを行う(moving window reading法)。実験参加者はコンピュータ画面の前に座り、スペースバーを押すごとに,例えばThe lady/who/I employed/last month/works hard/とスラッシュで区切られた語(句)が順番にコンピュータの画面に提示され(ボタンを押すと前の語(句)は消える),それぞれの語(句)を理解するのに要した時間が反応時間として1000分の1秒単位で測定される。 実験参加者は,Oxford Placement Testの結果により総合的な英語熟達度別に分析される。実際の実験では問題文やプログラムの設定の不備,および実験参加者の確保の問題(上級学習者の不足)から予備的な実験に終わり,当初期待した結果を得ることは出来なかった。従って残された課題も多く,更に継続して実験参加者の確保と実験方法の精選をはかり,第二言語習得のメカニズムの解明を目指して確実な調査を続けていくことが必要であり,そのための研究計画を現在立て直しているところである。
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