研究概要 |
本研究は,語用論能力習得研究において重要となるデータ収集方法において,より簡便な方法の開発,およびそれを利用した語用論能力養成のための意識的指導に役立つ学習材の開発を目的とした。研究を通して得られた成果は以下の3点である。 1)従来の語用論データ収集においては、ペーパーテスト形式による質問紙法のため、データ収集や分析方法において問題が指摘されていたが、コンピュータ利用のオンライン・テストにより、時間や場所を選ばすに、個人・集1団による診断・学習機会を得させることができる。また、一度に多量のデータ収集を行うことを可能にする手法として、今後の研究開発に貢献することができる。 2)語用論研究で最も一般的に利用される談話完成テスト(Discourse Completion Test以下DCT)において,テスト項目は、従来、ビジネス場面を中心としたものであり、大学生あるいは高校生,それ以下のレベルの学習者にとって、なじみのない場面もあった。大学生にとって、大学キャンパスでのアカデミック場面およびホームステイなどの非アカデミック場面が最も一般的に英語を使用する場面であると思われ、そこで実際の海外滞在場面の中で大学生が経験した異文化葛藤場面をDCTのテスト項目としたことが大きな特徴である。 3)語用論能力向上のため,意識的指導により,従来の言語語用論的知識のみならず,社会語用論的知識においても指導する可能性がある。これまで語用論教授のための教材,特に自己学習材はほとんど見あたらない。本研究において,テストの開発および研究のためのデータ収集だけでなく、それらをもとにした語用論能力の伸展を目指した指導に資するための教材開発を行ったことが特徴として挙げることができる。
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