研究課題
基盤研究(C)
日本語話者による英語の属格の習得並びに使用について、理論研究を行うと同時に、コーパスデータに基づく調査並びに実験によるデータ収集を行った。理論研究では、西山(2003)による日本語の「の」の研究ならびに、Rappaport(2004)およびRozwadowska(2006)による英語の-'s属格およびof属格の研究に基づいて、3つの形態素の共通点と相違点を明らかにした。コーパスデータについては和泉・内元・伊佐原(2004)によるThe NICT JLE Corpusを使用し日本人英語学習者の産出に見られる-'s属格とof属格の特徴を調べた。その結果、日本人英語学習者はofを-'sよりも多用し、その使用は母語話者と同様の傾向がみられるものの、母語の転移に基づくと考えられる誤用も散見されることがわかった。また、ofの使用は一般的英語力の伸びとともに増加するが、-'sの使用は一定程度以上増加しないことがわかった。実験によるデータ収集は、日本人英語学習者74人と英語母語話者21人を対象に、動詞由来派生名詞を主要部とする名詞句内の項構造に関する-'s属格とof属格の使用上の制限についての理解を見るために実施した。しかし、英語母語話者のふるまいが理論に基づく予測と異なった。本実験では、理論的には不可とされる構造でも、母語話者が可とする場合があり、予想通りの結果を得られなかったためである。これは、属格に関する形態統語の知識には、意味・語用の影響が深くかかわっており、その統制が十分に取れなかったためと考えられる。今後、文脈を統制した実験が必要であり、期間終了後も、引き続き研究を行う予定である。
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