研究概要 |
本研究は、台湾の国民小学・国民中学・高級中学で行われている英語教育内容(言語材料と言語活動)を、検定教科書から量的および質的データを用いて明らかにし、教育部(文部科学省に相当)により一貫性を目指して設定された各学校種別の能力指標(『課程綱要(学習指導要領に相当)』で明記)について、その普及度、活用方法、成績通知書との関係などの現状と課題を現地教員を通して整理し、台湾の3つの学校種における英語教育の連続性の実態を調査したものである。そして、そこから日本の英語教育に資する点を考察している。 本研究の調査内容とその成果は以下の3つに集約することができる。 1.教育課程上の「英語」「英文」の位置づけを明らかにすることで課程綱要で示されている各教育機関の能力指標と3つの教育段階における連続性を分析した。それにより、3つの教育段階での目的が、児童・生徒の認知的な成長と段階的に結びついているものと考察した。 2.英語教科書の質的な分析からは小中高の教科書のフレームワーク、文法項目、テーマ、題材、テキストジャンルなどの比較により、その違いや特徴が各教育段階の担うべき役割として現れていると考察した。一方、量的な分析からは、教科書のコーパス化により、総語彙数、語の種類、反復度の実態を明らかにした。小中では1,200語、高校では6,000語までの新語が含まれていること、中学校の教科書については、旧統一教科書との比較から総語数が増えていることなどが明らかになった。 3.新しい課程綱要に記載された能力指標について、普及は様々な形で行われているが、成績通知には使用されていないことや、教師の教科書への依存により、意識して活用することがあまりないことが明らかになった。
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