研究概要 |
一年目は,外務省外交資料館にて清末日中関係に関する梢案(行政文書)を広く精査し,中島雄が清国公使館書記官をつとめていた時代の日中関係史に対する理解を深めた。また,ネット上にデータベース公開されている同館所蔵の外交文書を,電子ファイルベースで精査・印刷し,いくつかの重要な外交問題に関して,海外研究協力者である孔祥吉氏と共同で論文を著述した。さらに,中島雄『随史述作存稿』を閲覧する過程で,新資料『袁世凱』(佐藤鉄次郎著,1911年刊)と題する中国語の著述を発見し,孔祥吉氏との共同作業により,長文の解題を付して,天津古籍出版社より「国家清史編纂委員会・文献叢刊」の一冊として刊行した。 二年目は,引き続き『随使述作存稿』の分析を進めた。この間,中島雄の伝記資料を若干収集し,「中島雄と清朝史研究」と題する論文を執筆した。この論文はまもなく脱稿し,中国語と日本語で,それぞれ中国と日本の学術雑誌に投稿する予定である。同時に,清末の日中関係をめぐる資料を新たに発見し,それらについての論考二篇を完成させ,2006年11月に中山市(中国)で行われた国際学術会議で報告し,さらにそれを中国の学術誌に掲載した。すなわち「章太炎与支那亡国記念会史実考略」と「《孫逸仙演説」与《滅漢種策》」がこれである。 今後は上記論考「中島雄と清朝史研究」の成果をふまえて,『随使述作存稿』の資料的価値を中国の清朝史研究者に広く伝え,同書の影印版出版の可能性について,日中の研究者や出版関係者と協議してゆく所存である。
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