研究課題
基盤研究(C)
ドイツの歴史学が文化史的な研究テーマに関心を示すようになるのは、1970年代のことだと言われている。偉人の足跡や画期となる出来事に関心を集中する事件史的な研究に代わり、社会層の動向や市井の人びとの生活に照準を合わせる社会史・文化史研究が台頭する。かって著名な文芸と同義であった文化概念は、その意味を拡張し、あらゆる社会層の生活様式全般と理解されるようになった。このような歴史研究のパラダイム転換を反映して、歴史教科書も文化史を重視する編集方針に一新された。これがドイツの歴史研究、歴史教育に訪れた転機に関する、現在通用している一般的な理解である。しかし、少なくとも歴史教育はもっと早くに文化史的な転回を体験した。ドイツの歴史教科書は、ライプツィヒの歴史家カール・ランプレヒトの文化史研究に触発され、すでに前世紀の世紀転換期に文化史的な転回を体験していた。このことを明らかにするために、特に歴史教科書に掲載された挿絵の変化に注目した。ランプレヒトが文化史の必要性を説く1890年代以前の歴史教材にも、すでに少なからぬ図版が使われていたが、それは偉人の肖像や著名な事件の図像であって、祖国愛を喚起するとともに、生徒の暗記を助けるのが目的であった。一方、1890年代を境として、特定の歴史的固有名詞を想起させない文化史的な図像が増える。それは道具や技術、住居や居住形態から風俗、ライフスタイルにまで及んだ。もちろん教科書の説明にも相応の変化が生じた。重要事項の暗記よりも、歴史の流れを理解することに重点が置かれるようになった。本研究に関して、2006年9月18日にライプツィヒの学校博物館で学術講演を行った。その後、講演を主催したカール・ランプレヒト協会から年報への投稿依頼を受け、目下執筆中である。
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知と学びのヨーロッパ史-人文学・人文主義の歴史的展開-(南川高志編)(ミネルヴァ書房)
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Chito Manabino Yoroppashi (The European History, seen from Learning and Study)(Minamikawa, Takashi (ed.))
知と学びのヨーロッパ史-人文学・人文主義の歴史的展開-(南川高志編著)(ミネルヴァ書房)
史林(史学研究会編) 88巻・3号
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