研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、ルイ14世期のフランス王権が戦争や国王のイメージをいかに表象していたのかを明らかにし、その表象がどのようにして社会全体へと発散されたのかを明らかにすることであった。この目的の達成のために各年度パリを中心として以下の調査を行った。17世紀における法学者を中心とした知識人たちによる王権と戦争に関する議論。同時期に制作された建築や絵画、彫刻における王権と戦争の表象。そこに見られるイメージ戦略。アルマナ(暦)を中心とした上記イメージの拡散過程の考察。王権の理論的考察においては、戦争遂行の法的・実体的主体としての国王が強調され、戦争王としての国王イメージが形成された。また、正戦論においては、開戦の歴史的正統性が強調され、主権論と結合してフランスの空間的領域をより強く主張する試みがなされた。これらの王権イメージはヴェルサイユを代表とする国王の生活空間や各種の建築物や記念碑、絵画などにおいて表現されるとともに、そのイメージはテクストが付された版画などにより積極的に流布された。またアルマナのような民衆層を対象とした出版物においても、国王の賞賛や戦争は大きな位置を占めていた。特に戦争は最重要のテーマとして数多く表象され、さらに戦争の一環として敵国とフランスを比較し、フランスの正統性を主張し敵を批判するメッセージが込められているものも多い。ルイ14世親政期のアルマナは、王権のプロパガンダとしての役割を果たしていたのである。以上のように、17世紀の王権の表象においては、戦争は不可欠なテーマであり、戦勝の誇示や敵の表象などが国王のイメージ、ひいては王の「栄光」や「権威」の形成において重要な役割を果たしたのであった。
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