研究課題
基盤研究(C)
研究期間3年間における本研究の内容と成果は以下のとおりである。1.日露戦争期のロシア銃後社会の具体的分析をおこない、そこではゼムストヴォや市会など社会的機関・組織が戦争努力を支える点で重要な役割を果たしていたことを明らかにした。他方、ロシアの人口の多くを占める農民の間では、戦争への不支持を背景として、共同体レベルにおける出征兵士家族援護に対して冷淡な事例もあり、その意味で、戦争を維持するイデオロギーとしてのナショナリズムは希薄であった。2.ロシアの銃後社会の特質を明らかにするために、日本の銃後社会との比較分析をおこなった。日本では、日清戦争以後社会のなかにおける軍事組織の浸透があり、また議会制度・教育制度・兵役などによる「国民形成」の進展もみられた。その意味で、日露戦争時には「戦争機械」としての国民国家が形成されていたといえる。3.日露戦争におけるロシアの相次ぐ軍事的失敗は、20世紀初頭に強まっていた自由主義者による体制批判を改めて喚起することになった。その際、解放同盟に集っていた人々、とりわけストルーヴェは、日本の「国民精神」に着目し、それと比してロシアにおけるナショナリズムの欠如を問題とした。多民族帝国であったロシアにおいて、帝国全体にわたる国民的政治空間を形成するために、彼らは日本の明治維新以降の歴史的展開に着目しながら、「性と民族の別なき普通・平等・秘密・直接選挙」に基づく国民代表制度を目標として掲げた。これが日露戦争のさなかにおこった第一次革命の普遍的目標となった。以上から、日露戦争と第一次革命は、ロシアにおける国民形成史の重要な一こまとして位置づけることができる。
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