研究概要 |
石干見は現在、(1)文化財として保存されることによって新たな文化的意味が付与されるものや、(2)サンゴ礁の保全を目的とする環境保護運動において環境に見合った伝統漁業として注目されるもの、(3)漁業活動を観光客に楽しませたりする「参加型」のレクリエーション施設としてツーリズムの中に組み込まれるもの、などが現れてきている。しかしながら、これまでの伝統にもとづく利用形態や、所有の状況などについては、依然として明らかにされていない部分が多かった。本研究ではこれらのことをふまえて、残存している石干見の現状について把握するとともに、各地で石干見漁法がどのようにして環境保護運動やツーリズムの中に組み込まれようとしているのかという実態を調査した。これは研究主題のうちの「活用」にあたる部分である。他方,石干見の「保存」を考える場合,この漁法がいかなる役割を有してきたのか,またその生産力はどれほどのものであったのかなど,石干見を各地域の漁業史のなかに位置づける必要があった。これについては,石干見に関する歴史的資料を収集し,これらを分析することも試み,台湾,韓国,日本の有明海をフィールドとして一定の成果を得た。海の文化的景観としての石干見の重要性,維持管理と動態保存の可能性などは今後も議論の対象になるであろう。このような動きを創造する地域と人びとに注目しながら,石干見がいかにして新たに生成され,保存されてゆくのか,地域文化の表象の問題としても注目していかなければならない。
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