研究概要 |
英語及び日本語の初期音韻獲得のデータについての比較研究を通し、通言語的な「有標性」及び個別言語的な「有標性」について調査し、最終的には言語の「普遍性」と「変異性」についての理解を深めることが研究の目的である。 正常発達児の初期音韻データの分析から、子供たちの韻律構造の変遷は1モーラ期を経るのではなく、初期段階から2モーラ韻律構造が音韻知識として備わっている可能性が大きいこと、さらには、2モーラフット構造のみならず、phonological wordのレベルでは初期段階において重音節+軽音節が無標形として何らかの普遍的な役割を果たしている可能性もあることが昨年度までの成果結果から示唆された。今年度は初期音韻段階で好まれる語形とはどういったものか、ということを詳細に知るために、日本語の各方言における1モーラ語の幼児形を調べた。その結果、予想に反して2モーラで出力されるものは意外と少なく(22.1%)、もっとも多い出力形は重音節+軽音節という組み合わせであることが明らかとなった(42.9%)。このことから、語形レベルでの無標構造が独立して存在する可能性は極めて高いことが示された。 この研究成果は日本音韻論学会主催の記念大会(東京大学)に講演講師として招かれた際に発表した他、Phonological acquisition, speech errors and markednessというタイトルで図書出版した。
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